般若心経【解説】
般若心経は、
お釈迦さまが、
舎利子(しゃりし)という知恵第一番尊者、
十大弟子の一番弟子に向かって、
「観音様がこういうときに、
実は、お悟りあそばれたことなんだけどね、
いいかい、舎利子くん」と、
話しかけるように教えを説いた言葉である。
✔️般若心経の正式名称:
摩訶般若波羅蜜多心経
(まかはんにゃはらみつたしんぎょう)
以下、般若心経、本文解説。
観自在菩薩(かんじざいぼさつ)
行深般若波羅蜜多時(ぎょうじんはんにゃはらみつたじ)
【解説】———-
自在にものを見通す力を持った菩薩様、観世音菩薩が、
人類を救済するために、
より深い知恵を身につけようとして
行に励んでいたときのこと。
「般若」というのは
人類を救済する知恵のこと。
「波羅蜜多」というのは、
人類最高の、これ以上ないというもの。
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照見五蘊皆空(しょうけんごうんかいくう)
【解説】———-
照らし見るに、
五蘊は皆、空(くう)なり、と
お見通しになった。
五蘊は全て、空(くう)なのだよ、と。
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度一切苦厄(どいっさいくやく)
【解説】———-
一切の苦厄は、
此岸(こちらの世界)から、
彼岸(神や仏の世界)に
あっという間に渡すことができる。
つまり「悩み苦しみというのは、瞬時に解決できる」
と観世音菩薩は、お悟りあそばれた
と言っているのである。
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舎利子(しゃりし)
色不異空(しきふいくう)
空不異色(くうふいしき)
【解説】———-
舎利子よ、
色は空に異らず(色はカラである)、
空は色に異らず(カラは色である)。
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色即是空(しきそくぜくう)
空即是色(くうそくぜしき)
【解説】———-
色は即ち、これ空なり、
空は即ち、色なり。
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受想行識亦復如是(じゅそうぎょうしきやくぶにょぜ)
【解説】———-
受・想・行・識もすべて
同じように出来ているのだよ。
つまり、
受即是空(じゅそくぜくう)
空即是受(くうそくぜじゅ)
想即是空(そうそくぜくう)
空即是想(くうそくぜそう)
行即是空(ぎょうそくぜくう)
空即是行(くうそくぜぎょう)
識即是空(しきそくぜくう)
空即是識(くうそくぜしき)
というようにやりなさい。
人間ひとつひとつの感覚レベルのものは、
すべて中身が空(くう)なのだよと、
舎利子に呼びかけている。
すべて「空」。
「空」とは、
存在するが、
特別な性格づけがされているわけではないのだよ。
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✔️ポイント
「般若心経」は、この冒頭の2、3行で極まっている。
この中心テーマを伝えるために、あとは、いろいろなたとえ話をもっくる。
例えば、増加することもない、減ることもない、
汚いということもない、綺麗ということもない、と。
舎利子(しゃりし)
是諸法空相(ぜしょほうくうそう)
不生不滅(ふしょうふめつ)
不垢不浄(ふくふじょう)
不増不減(ふぞうふげん)
是故空中(ぜこくうちゅう)
無色(むしき)
無受想行識(むじゅそうぎょうしき)
【解説】———-
すべての存在物は、
空想の中にあり、
生じることも滅することも、
汚いことも綺麗なことも、
増えることも減ることもありません。
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無眼耳鼻舌身意(むげんにびぜつしんい)
【解説】———-
眼で見える世界、耳の世界、
鼻の世界、舌の世界、
身体で感じる世界、
さらに意識の世界、
これももともとはない。
「五蘊皆空」がわかったら、
そうゆうものも関係がないのです。
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無色声香味触法(むしきしょうこうみそくほう)
【解説】———-
色も声も香りも味も触覚も、
もともとない。
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無眼界(むげんかい)
乃至無意識界(ないしむいしきかい)
【解説】———-
無眼界=「眼識」が無い。
乃至=「~から~まで」。
無意識界=「意識」が無い。
眼から入ってくる感覚や意識によって、
迷うことも無い。
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無無明(むむみょう)
亦無無明尽(やくむむみょうじん)
【解説】———-
生まれる前の何もわからない状態が「無明」。
生まれる前の何もわからない世界というのもない。
また無明が尽きることもない。
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乃至無老死(ないしむろうし)
亦無老死尽(やくむろうしじん)
【解説】———-
老いて死ぬことも、
尽きることもない。
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無苦集滅道(むくじゅうめつどう)
【解説】———-
苦集滅道さえも、
自分が「思い」をもっていなければ、
もともとないのだ。
苦は、生老病死などの苦。
集は、苦の原因になる煩悩などの集積。
滅は、苦集が滅した悟りの境地。
道は、悟りに達する修行のこと。
つまり、人間には物差しがあり、基準があり、
そうあるべきだという考え方があるから、
そこに「思い」が生まれ、
論評や評価が生じ、
思い通りにならないと否定することになる。
悩み苦しみは、そこから生じるのだ。
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無智亦無得(むちやくむとく)
以無所得故(いむしょとくこ)
菩提薩埵(ぼだいさつた)
依般若波羅蜜多故(えはんにゃはらみつたこ)
心無罣礙(しんむけいげ)
無罣礙故(むけいげこ)
無有恐怖(むうくふ)
【解説】———-
智を得ることもなく、
得することもない。
所有することがない故に、
それをもって、
知恵を得た方々は般若波羅蜜多に依ることで、
心の曇りがなくなり、
それゆえ恐怖もない。
罣礙(けいげ)は「心の曇り」。
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遠離一切(おんりいっさい)
顚倒夢想(てんどうむそう)
究竟涅槃(くきょうねはん)
【解説】———-
神仏から見ると、
人間は、まるで逆さまの生活をしているようだ。
欲しいものを手に入れれば幸せになれると思っているが、
その執着が苦しみになっている。
それを一切遠ざければ、
涅槃(ねはん)の境地に至る。
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三世諸仏(さんぜしょぶつ)
依般若波羅蜜多故(えはんにゃはらみつたこ)
【解説】———-
三世は、前世、今世、来世。
その三世諸物は、般若波羅蜜多に依(よ)るが故(ゆえ)に、
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得阿耨多羅三藐三菩提(とくあのくたらさんみゃくさんぼだい)
故知般若波羅蜜多(こちはんにゃはらみつた)
【解説】———-
最高の、至高の、
これ以上ないという言葉を三つ重ねて、
そのすばらしいものを得たがる故(ゆえ)に、
般若波羅蜜多というものを得たがるが故(ゆえ)に、
ただひとつの言葉に向かって進めばよい。
と、気がつくのです。
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是大神呪(ぜだいじんしゅ)
是大明呪(ぜだいみょうしゅ)
是無上呪(ぜむじょうしゅ)
是無等等呪(ぜむとうどうしゅ)
【解説】———-
「是大神呪」=仏の智慧は大いなる神のことばである。
「是大明呪」=無明を明らかにしたもの、一切の智慧。
「是無上呪」=これ以上無い最高の真言。
「是無等等呪」=これに等しい真理は無い、比べるものが無い。
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能除一切苦厄(のうじょいっさいくやく)
真実不虚(しんじつふこ)
【解説】———-
すべての一切の苦を取り除くものである。
これが真実のことであり、
偽りではない。
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故説般若波羅蜜多呪(こせつはんにゃはらみつたしゅ)
即説呪曰(そくせつしゅわつ)
【解説】———-
故に、仏の智慧のことばを説くと、
以下のとおりである。
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羯諦羯諦(ぎゃていぎゃてい)
波羅羯諦(はらぎゃてい)
波羅僧羯諦(はらそうぎゃてい)
【解説】———-
羯諦は「行こう、行こう」
という意味に相当する。
レッツゴーということ。
何も考えず行こう。
実践すればいいのだ。
ただ、実践的に生きていけばいいのだ。
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菩提娑婆訶(ぼじそわか)
般若心経(はんにゃしんぎょう)
【解説】———-
これで成就しました。
これで落ち着きました。
般若心経、これにて終わります。
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✔️ポイント
「般若心経」は、「五蘊皆空」に尽きます。
「五蘊は皆、空なり」。
それがわかったら、
あとは、ない、ない、ない、と続きます。
だから、羯諦羯諦だけを言っていればいい。
これはレッツゴー(let’s go)ですから、
「此岸から彼岸へ渡ろう」
「ただそれだけを考えて向こう岸に行こう」
と教えているのです。
おしまい